女子力高めなはずなのに
でも、それで気がついた。この子は俺を足止めしようとしている。

つまり、中野さくらが危ない。

一瞬、抱かれてしまえばいいと思って、そう思った自分を呪った。だって、そんなことになったら中野さくらは間違いなく傷つく。

ただの賭けの対象。槇村は彼女を幸せにする気持ちなんて、これっぽっちもない。面白がって口説いているだけ。

それなのに。

抱かれてしまえばいいなんて、俺はバカだ。

ガタッと急いで立ち上がって「お先」とも何も言わず、コートだけ持って急いで社屋を出た。

探す当てなんか全然なくて、もう間に合わないかもしれないという思いが一瞬よぎって、フラれたからってふて腐れた自分を呪って、胸が苦しくて痛くてたまらなかった。

彼女が抱かれてしまったら、後悔してもしきれない。

もっと早く止めていれば。

奥歯を噛み締めてそう思った時、中野さくらの後姿がちらっと目の端に映った。その瞬間、今までそんなスピードで走ったことないだろうってくらい猛ダッシュで走った。

きっと捕まえた時、手加減できずに思いっきり掴んでしまったと思う。でも、捕まえた手を絶対に離したくなくて、連れて行く言い訳も支離滅裂で、とにかく槇村から中野さくらを引き離すことしか考えられなかった。

彼女を引きずるようにして歩きながら、間に合って良かったと思いつつ、本当にギリギリだったと思うと心臓が激しく打ちつけて、うるさくてたまらなかった。
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