女子力高めなはずなのに
中野さくらは、俺にいきなり邪魔をされて怒っていた。楽しみにしていただろうに。もう俺のことなんて大っ嫌いだろうな。

本当のことを言ってしまおうか。でも……、傷つけたくない。

だから「アイツはダメ」なんて曖昧なことを言ってごまかした。

また自棄になって一人で飲みに行ったりするんだろうか?それも許せない。だから家まで送ることにして、嫌われついでに、もうチャンスもないだろうから手を握ってみた。

嫌がるだろうと思って無理やり手を握ったのに、中野さくらはそれほど嫌がらなかった。俺はその表情をどう捉えればいいんだ?

「俺たち恋人同士に見えるかな?」

そんなことを言ったら元気に突っ込んでくるかと思いきや、「そう見えちゃうかもよ」なんて返してきた。その台詞を俺はどう捉えればいいんだ?

そんなの、まるで俺に気持ちが向いてるみたいじゃないか。それとも君はそうやってどの男にも思わせぶりなのか?

その柔らかい小さな手を離したくなくて、駅で改札を抜けてもすぐに繋いで、出来るだけ近くに引き寄せて、胸の痛みに耐えるのに精一杯で、話なんかほとんどできなかった。

彼女の家まで来た時、本当は「あんな奴、俺が忘れさせてやる」と言って抱き締めたかった。でも、気持ちを押しとどめて手を離した。

階段を駆け上がった彼女は振り返らずに家に入って行った。やっぱり、嫌いだよな。俺のことなんか。

抱き締めなくて良かった。またセクハラになるところだった。いや、手を繋いだりして、既にセクハラだよな……。
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