女子力高めなはずなのに
俺には想像もつかない生活。

彼女はひたすら一生懸命生きてきたんだろう。
死ぬことなんて考えず、生きることだけを考えて。

むしろ、死にそうな状況だったからこそ、生きることに必死だったのかもしれない。彼女の輝きは、生きることへの輝きなんだろうか。

でも、それだけじゃない。
悲惨な状況にあっても腐らず、こうして輝いていられるのは、彼女自身の努力と、元々持ち合わせた明るさを失わずにいたからだろう。

俺にはない輝き。

彼女の無垢な明るさは、わずかに触れた小指から流れ込んでくるようで、こんな俺のことでさえ温かく照らしてくれるように思えた。

俺には今まで生きてきて、死にそうになる場面なんてなかった。
でも、いつも死が隣り合わせにあるような気がしていた。俺の兄貴がそうであったように。

俺と彼女の決定的な違い。生きることに一生懸命な彼女は、俺にはないものを持っている。

俺は衣食住に困ったことはない。ただ、愛されなかっただけで。

兄貴も大人になるにつれて、母親が自分を大事にするのは愛しているからではないことに気がついたはずだ。

母親が求めていたのは、兄貴でもなく、俺でもなくて、母親の望みをかなえる傀儡としての優秀な跡継ぎ。

それを知った時、兄貴は俺を羨ましいと思っただろう。兄貴から見たら、きっと俺はなんの重圧もなく、気楽に生きているように見えただろうから。
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