女子力高めなはずなのに
二人とも夢中になって求め合っていたけれど、井川さんは名残惜しそうに何度もチュッと唇をついばんで、すごく優しい瞳で見つめてから私を胸の中に抱き締めた。

……頭を撫でられてる。

ぽーっとして何も考えられない。

ただ、私を包む腕の力と鼓動だけを感じる。

私、抱き締められている……。

井川さんの胸に頬を寄せてる。

暖かい、心地いい、幸せ。

ずっとこうしていてほしい。

こんなキスをするなんて……。

……。


……あれ?

こんなキスをするなんて。

井川さん……、どうしてキスなんてしたの?

急にヒンヤリしたと現実が、心に忍び寄ってきた。

こんなキスをするなんて……、井川さんどういうつもり?

私のこと、慰めたつもり?

それとも、こんなことまで私を誰かの代わりにしてるの?

あんな優しくて甘くてとけてしまうようなキス……。

本当は誰としたかったの?

もうイヤ……、嫌だよ……。

「……やめて」

腕を突っ張って少し体を離した。

「ごめん」

「!」

謝るなんて!

「謝るくらいなら、最初からこんなことしないで!」

「嫌だったなら謝るよ。ごめん」

「嫌だよ!もう誰かの代わりなんてイヤ!」

「は?」

少し離れた体は、もう一度強い力で引き寄せられてしまった。
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