女子力高めなはずなのに
「昨日もそれ言ってたな?何だよ、それ?」

「だって!だって……井川さん、心に決めた人がいるんでしょ!」

言葉にしたら現実感が湧いて、もっと辛くなってぽろぽろ涙がこぼれてきた。

「……それ、野村さんから聞いたの?」

「そうだよ!ヒドイよ!どうして私のこと、その人の代わりにするの?」

離してほしくて泣きながら腕をバタバタ動かしたら、今度は両手首を掴まれた。

「捕まえたっ!」

手首を掴んでククッと笑う井川さん。

……井川さん、なに笑ってるの?

なんなの?

「やめてよ!離してっ!」

「バカな子、捕まえた」

「っ!」

ひどいっ!

バカにしてる!

「なによ!もうイヤッ!」

この期に及んでバカな子呼ばわりなんて!

こんなひどい男を好きだなんて……。

悲しすぎてぽろぽろ涙が落ちる。

もっと激しくジタバタと暴れた。

「じゃあ、心に決めた人、捕まえた」

……。

よく聞こえなかったけど……。

……なんか言ったよね。

気のせい?

でも気になって動きを止めた。

「……え?」

「バカな子だね?中野さくらさん」

「……」

「頭が小さいから、仕方がないかっ、フフッ」

井川さん、一人で笑ってる。
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