女子力高めなはずなのに
「思ってることって、なんだろ……?」

「お前が思ってることを言ってやればいいんだよ。嫌だと思ってることとかさ」

嫌だと思ってること?

「例えば……酔って殴らないで、とかそういうこと?」

「そうそう、そういうこと!だって嫌だろ?」

「うん……、イヤ」

言われてみたら、ちゃんと言ったことなかったかも。

イヤだってこと。

そっか。

言わないと、伝わらないもんね?

井川さんが好きって言ってくれるのと同じで、お父さんにも私が何が嫌なのかを伝えないと、私がどう思っているのかすら、分からないのかもしれない。

言っても分からないかもしれないけど。

でも、言わないよりはマシかもしれない。

お父さんに正面から向き合うなんて怖いけど、井川さんが一緒にいてくれるなら、大丈夫。

でもやっぱり少し怖くて、すり寄ったら抱き締められた。

「怖い?」

「……うん。でも、大丈夫」

だって、こうしていると包まれて温かくて、すごく安心するの。

でも、井川さんは私とはちょっと違う思いを持ったようで……。

柔らかい唇が、耳から首筋を伝って落ちてきたから身を捩った。

ん?

あれれ?

あ……、そんな、ダメ。

あっという間に引きずり込まれて、体の芯から指先まで甘い痺れに支配されていく。

そしてまたぐったりして、ウトウトして、気がついた時にはもうかなり明るくなっていた。
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