女子力高めなはずなのに
久しぶりに来た実家は、周辺の景色も含めて全く変わっていなかった。車窓から見えるやたらでかい看板も、川沿いの並木道も、家の前の田んぼも、降り立った時の静けさも。何もかも変わっていなかった。

だから、いつものように兄貴がそっとカーテンをめくって俺を覗き見るんじゃないか、と2階の角部屋を見上げたが、窓枠の中は写真のように時が止まっていて、カーテンは微動だにしなかった。

そうだよな、分かってるんだけど。

門まで出迎えてくれたのは、顧問弁護士の宗像(むなかた)さんだった。俺はこの人が少し苦手だ。4年ぶりに会う宗像さんは髪が白くなり、離れていた月日を感じた。

「イツキくん、久しぶりだね」

「お久しぶりです」

頭を下げると宗像さんはにっこりと笑った。初老のはずなのに宗像さんの笑顔は爽やかで、まるで青年のようにも見える。

急に落ち着きなく俺を見上げるさくら。

「あ、あのっ……」

「さくら、この人は顧問弁護士の宗像さん。宗像さん、紹介します。中野さくらさんです」

「初めまして、宗像と申します。イツキくんの婚約者がこんなに可愛らしい方で安心したよ」

「はっ、初めまして。中野さくらと申します。ど、どうぞよろしくお願いいたしますっ!」

さくらはガチガチに緊張して勢いよく頭を下げた。

「本当に可愛らしいお嬢さんだね」

宗像さんはまた爽やかに微笑んだ。
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