女子力高めなはずなのに
俺の実家は古い木造建築だ。2階建てだが、いちいち広くて作りが立派だから、さくらは予想通り口を開けて驚いていた。

「口、開いてるよ」

「っ!」

急いで口元に手を当てるさくら。口を開けているさくらも可愛いけど、そんな所を親戚に見られたら嫌味のネタにされる。

俺が婚約者を連れて帰るなんて噂、親戚筋にはあっという間に広がっているだろう。この土間から先は誰が待ち構えているか分からないから、油断はできない。

両親は会合が延びていて遅れるらしく、俺たちは応接室に案内された。

ひんやりと寒い廊下の床板は、光沢のある飴色に研かれていて、外に面した木枠のガラス戸の向こうには、丁寧に手入れされた植栽と池が見える。

この家は変わらないな。

応接室は奥の池に面した角部屋で、ガラス戸に囲まれているからとても明るい。畳の上に敷かれた絨毯と、古いえんじ色の肘付きソファーがノスタルジックな雰囲気を醸し出していた。

子どもの頃、俺はこの部屋が好きだった。こっそり入り込んではソファーに座ってビロードの感触を楽しんでいた。

あの頃はもっと大きな部屋かと思っていたが、今こうして入ると意外と狭くて驚く。

宗像さんにどうぞと進められて、俺とさくらはソファーに腰かけた。
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