女子力高めなはずなのに
宗像さんはお茶をすすりながら涼しい顔をして言った。

「イツキくん、最近お仕事はどう?」

「え?ええ、まあ。変わらずそれなりに忙しいですよ」

「このご時世、忙しいのはいいことだよ。僕はもう年だからさ、事務所は若いのに任せて最近はのんびりしてるんだ」

「そうですか」

「今度そっちに行ったら、東京見物でも連れて行ってよ」

「ええ、いいですよ」

宗像さんは結婚していない。生涯独身。子どももいないから、弁護士事務所は雇っているいそ弁(居候弁護士)にでも託すんだろうか。

パタパタと奥から足音が聞こえてきて、家政婦が声をかけてきた。

「奥様がお戻りになられました」

ドクンッと自分の鼓動が聞こえた気がした。

いよいよ対決か……。気を引き締めて顔を上げると、目があった宗像さんは変わらず柔らかい表情をしていた。

「思っていることはきちんと伝えてきなさい」

「……はい」

俺は硬い表情のままうなずいた。そんなことを言うこの人は、思ったことをちゃんと伝えてきたんだろうか。
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