女子力高めなはずなのに
母親も威圧的な視線をそらさない。

「イツキ。井川を継がず、その子と結婚するということは、この家の敷居は二度とまたがない覚悟で来たと受け取りますよ」

「そう受け取ってください」

俺は目をそらさない母親に負けじと、黒い瞳をじっと見たまま、はっきりと答えた。

「カズくん……」

心配そうについうっかりそう言いかけて、さくらはハッとして口を閉じた。でも、そのさくらの呼びかけを聞いた母親の瞳がふいに揺れたから、驚いて目が離せなくなった。

なんだ?動揺している?そんな呼び方する女はダメか?いやいや、そんなの関係なく元々認めていないんだろう?

しばらく沈黙した後、母親は動揺の収まった瞳で突き放すように言った。

「分かりました。子どもの頃からそうだった。あなたは井川にとって価値のない、いらない人間。あなたみたいな役立たずに土地は相続できません。誓約書に署名して、さっさと出て行きなさい」

俺は子どもの頃から価値のない人間……。分かっていたが、言葉にされるとさすがに傷つく。

それに誓約書なんてあるのか?ずいぶん用意がいいな。もしかして、最初から俺を追い出すつもりだったのか?

まあ、俺はいらない人間だからな。

土地なんて別にいらない。むしろ土地なんて貰ったら、相続した時の相続税で首が締まりそうだ。

「そうさせていただきます」

わざとらしく深々と頭を下げてから顔を上げると、また母親と目が合った。何を考えているのか全く分からない瞳。
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