女子力高めなはずなのに
書類を差し出されて、初めて父親の存在に気がついた。後ろに控えて、まるで秘書のような父親。
誓約書にペンや朱肉まで用意してあるなんて、やっぱり最初から法的にも完全に追い出すつもりだったんだな……。
俺はいらない子、価値のない子。
いらない子なら、跡継ぎの候補になんかしないでくれ。そのせいで、俺だっていろいろ悩み苦しんだんだ。
イラッとして、書類の内容などろくに見もせずサインした。どうせいらない人間を追い出すための書類だ。
念のために持ってきていた実印を押して差し出すと、父親がそれを受け取った。母親は横目でその様子を見届けると、静かに立ち上がった。
「もう二度と来ないで」
母親は黒い瞳で見降ろしてそう言い捨てると、また足音もなくスッと廊下に姿を消した。
この言葉が、この姿が、母親を見る最後なんだろうか。
「これはイツキの控えだ」
父親が書類の1枚を渡してきた。どうやら1枚は自分の控え、1枚は井川家の控え、もう1枚は弁護士が保管するようだ。
俺が書類を受け取ると、父親は鼻で笑うように言った。
「宗像先生が口添えしてくれたみたいだな」
みたいだ、なんて自分は何も知らないような口振りだな。
「宗像さんが、ですか?」
「こんな紙切れまで用意してくれたんだ。感謝しておけ」
「……」
どういうことだ?
俺を完全に追い出すための書類を用意したのが宗像さんだっていうのか?追い出されるのに、いったい何に感謝しろというんだ?
でも、静かに頭を下げた。
「分かりました。後でお礼を言っておきます」
誓約書にペンや朱肉まで用意してあるなんて、やっぱり最初から法的にも完全に追い出すつもりだったんだな……。
俺はいらない子、価値のない子。
いらない子なら、跡継ぎの候補になんかしないでくれ。そのせいで、俺だっていろいろ悩み苦しんだんだ。
イラッとして、書類の内容などろくに見もせずサインした。どうせいらない人間を追い出すための書類だ。
念のために持ってきていた実印を押して差し出すと、父親がそれを受け取った。母親は横目でその様子を見届けると、静かに立ち上がった。
「もう二度と来ないで」
母親は黒い瞳で見降ろしてそう言い捨てると、また足音もなくスッと廊下に姿を消した。
この言葉が、この姿が、母親を見る最後なんだろうか。
「これはイツキの控えだ」
父親が書類の1枚を渡してきた。どうやら1枚は自分の控え、1枚は井川家の控え、もう1枚は弁護士が保管するようだ。
俺が書類を受け取ると、父親は鼻で笑うように言った。
「宗像先生が口添えしてくれたみたいだな」
みたいだ、なんて自分は何も知らないような口振りだな。
「宗像さんが、ですか?」
「こんな紙切れまで用意してくれたんだ。感謝しておけ」
「……」
どういうことだ?
俺を完全に追い出すための書類を用意したのが宗像さんだっていうのか?追い出されるのに、いったい何に感謝しろというんだ?
でも、静かに頭を下げた。
「分かりました。後でお礼を言っておきます」