女子力高めなはずなのに
書面に目を通すと、土地は相続しないこと、金銭の相続割合、今後井川家に俺は一切関与しないことが書かれていた。
そして、この覚書を母親と取り交わすとあり、母親の署名捺印もある。

これは誓約書じゃない?……覚書?

それに、金銭の相続権は残るのか?何もかも剥奪されて追い出されたのかと思っていたのに。

「……」

追い出されたことに変わりはないが、俺にとって不都合な点は全くない。

いや……。
冷静になって見ると、これはむしろ俺にとって都合の良いことしかない。

金は相続するが土地の相続はない。後は井川家と無関係になって、ただ自由になるだけ。

土地を相続すると相続税が莫大になる。しがないサラリーマンの俺に払えるような金額ではないだろう。払うには土地を売るしかない。

もしかして……。
最初からこうするつもりだったのか?
井川家の所有地を減らさないためだろうか?

それとも、家を継がない俺が相続で苦しまないよう、これを用意したんだろうか。

それならなぜ母親は、あんな挑発するように結婚は認めないとか井川を継げとか言ったんだろう。……でも、あの強引な母親にしては簡単に諦めすぎだと違和感は感じていた。

父親はこの覚書について、何も知らない様子だった。つまり父親は関わっていない。母親と宗像さんが二人で話し合って決めたんだ。

母親と宗像さんとの間で、いったいどんな会話があったんだろう。
あの二人の関係は何なんだ?
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