女子力高めなはずなのに
母親と宗像さんはこれまで、男女の関係なんて欠片も感じさせなかった。ワンマンな当主と物静かな弁護士。いつも事務的で一歩引いた関係の二人。

唯一、俺の存在だけが二人の関係に一石を投じていたが、宗像さんが父親のような素振りをしたことは一度たりともなく、俺と話をする時は弁護士としていつも距離を置いていた。

俺が子どもの頃は不貞の子だとずいぶん噂をされたが、二人の関係があまりに事務的で距離があるから、噂話もだんだん下火になって、いつの間にか消えていった。

だから俺も、まさかあの二人に限ってあり得ない、と考えることを避けていた。

でも、今日はさすがに確信した。俺は宗像さんに似すぎている。明らかに親子だ。それに加えて宗像さんの意味深な発言。

母親と宗像さんの関係……。

一夜限りの過ちだったのか?
それとも、誰にも気付かれぬよう、密かに逢瀬を重ねていたんだろうか。

母親は若くして決められた相手、つまり父親と結婚した。父親は政治家の一族で本人に力はなくとも、家の力は絶大だ。

でも、父親は結婚する前から女癖が悪かったと芳江さんから聞いたことがある。母親はそれを知っていながら放置し続けていた。

さくらが「カズくん」と呼んだ時のあの母親の動揺。もしかしたら、若い頃の母親は宗像さんを「カズくん」と呼んでいたのかもしれない。

そして宗像さんとそっくりな俺を産んだ。

……母親が本当に愛しているのは、宗像さんなんだろうか。

愛する男の名前を、愛する男の息子である俺に付けたのか?

普通そんな分かりやすいことをするだろうか。そんなの、一途すぎる……。
それとも浮気性の父親に対する復讐か?その時父親はどう思ったんだろう。

俺なら耐え難いな。想像を絶する。
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