裏腹王子は目覚めのキスを
がちゃんと、音が響いた。
わたしが持っていたスプーンがスープ皿に当たって、テーブルを転がる。
「な、なっ……」
顔が一気に燃えた。
口をぱくぱくさせているわたしからゆっくりと手を戻し、トーゴくんは呆れたように言う。
「……冗談だよ」
ため息混じりの声に、力が抜けてしまった。
「へ、変なこと言わないでよ、もう」
あやうく想像するところだったじゃない。
よくよく考えれば、わたしがプレゼント――なんて自分を差し出したところで、トーゴくんが喜ぶとは思えない。
そもそも一夜限りのために自分をさらけ出すなんてハイレベルなこと、わたしには逆立ちしたってできっこない。
「女慣れしてる人の言うことは、やっぱり違うね」
キャンドルの揺らめく光の中で、トーゴくんの表情ははっきりとはわからない。
笑っているように見えるけど、些細な表情の変化までは読み取れなかった。