裏腹王子は目覚めのキスを

「友達に散々責められたんだ。なんで羽華子と別れたんだって」 
 
カフェ店内では休憩中のサラリーマンが、パソコンを打ったりタブレットを見たりしている。
平日の昼間、オフィス街のカフェでこんな話をしているわたしたちも、スーツ姿だから、仕事の打ち合わせをしているようにしか見えないかもしれない。

「戻ろう、僕たち。君のためにも、そうするべきだよ」


以前までだったら、健太郎くんの提案に、素直に「うん」とうなずいていたと思う。
 
でも今は、何かが引っかかる。
わたしのために言ってくれているとわかるけど、このまま流されてはいけないような気がする。
 
なぜだろう、と考えて、頭の中に三十路を迎えた王子様がよみがえった。

「健太郎くん、あのね、わたし今、幼なじみの家に居候してるの」

「うん、そう言ってたね」

「その幼なじみ、男の人なの」

「そうなんだ」
 
驚いたようすもなく、彼はうなずく。

「何も思わない……?」

「何もって、何を?」
 
きょとんとした顔で、健太郎くんはコーヒーカップを手に取った。

「だって、幼なじみとはいえ、男の人と一緒に住んでるんだよ」

「いまどきルームシェアなんて珍しくないよ。それとも、肉体関係でもあるの」

「な、ないよ」
 
あわてて否定する。

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