裏腹王子は目覚めのキスを

事実、やましいことなんて何もないのに、頬が勝手に火照って焦る。
思い出されたのは、いつか間近に見たトーゴくんの裸だ。

「ただの幼なじみだし、変な間柄じゃないけど……ただ、健太郎くんともう一度付き合うことになったとして、わたしが男性と住んでるのは問題なんじゃないかなと」

「別にいいんじゃない。仕事見つけたら出てくんでしょ。それまで世話になってれば」

「え……う、うん」
 
健太郎くんは、自分の生活スタイルを崩されることをひどく嫌う。
だから、わたしに自分のマンションへ来いとは言わないのだ。 

「羽華子は寂しがり屋だから、誰かと住んでたほうがいいでしょ」
 
わたしの内面を見透かす言葉に、うなずいてしまう。
 

わたしは昔から、自分のためにはまるで動けないタイプの人間だった。
 
誰かが傍にいてはじめて、料理や洗濯や掃除や、そのほかの様々な努力をする気になれる。
誰かというのは、家族でも彼氏でも友達でも、とにかく誰でもいい。

人のため、という名目がないと、わたしはどこまでもだらけた人間になってしまうのだ。

「あとは恋人がいれば、羽華子の気持ちは安定するんじゃないの」
 
少し迷ってから、わたしは肯定する。
健太郎くんは、わたしという人間をよく理解してくれている。

「僕だったら浮気なんか絶対にしないし。君の理想のタイプのはずだ」

「……うん」
 
ざらざらと砂が混じったような特徴的な声は、わたしの心の奥深くを撫でる。
 
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