裏腹王子は目覚めのキスを
「僕といれば、羽華子は幸せになれるよ」
静かに断言され、ふらついていた気持ちが支えられる。
「うん、そうだね……」
女の子にがつがつしていない健太郎くんなら浮気の心配もないし、頼りないわたしをしっかり引っ張っていってくれる。
健太郎くんは笑顔を見せないまま、それでも満足したように一度うなずき、コーヒーカップを持って席を立った。
「僕は仕事に戻るよ。今日の面接の結果は今日明日中に出ると思うから。また電話する」
「うん、わかった」
カバンを拾い上げて、健太郎くんは忙しそうにカフェを出ていく。
ずんぐりした背中が透明なビニール傘を差して遠ざかっていくのを窓ガラス越しに見ながら、わたしは息をついた。
元の鞘に収まってしまった。
……トーゴくんになんて言おう。
三十歳の王子様の顔を思い浮かべると、なぜだか気が重くなる。
健太郎くんの存在を話した時の剣幕を思い出して、わたしはひとりで考え込む。
保護者だとか言ってたけど、そもそもわたしたちはただの幼なじみなのだから、わたしが誰と付き合おうがトーゴくんに興味なんてないはずだ。
わたしがあのマンションを出れば、彼だって自由に女の人を自宅に呼べるだろうし……。
そのとき、こんこんと、顔のすぐ横の窓ガラスが叩かれた。
目を上げたわたしは、そこに立つ人物を見て「あっ」と声を上げた。