裏腹王子は目覚めのキスを
細いペンで線をを引いたみたいなはっきりとした二重まぶたをわずかに痙攣させたと思ったら、トーゴくんはテーブルに沈み込んでしまいそうなほどの重いため息を吐いた。
王子様らしからぬ、がりがりと髪を掻くような荒っぽい仕草を見せ、恨めしそうにわたしを見あげる。
「とりあえず、そいつのこと、よく聞かせろ」
「そいつって……」
「見た感じ、そんなに良さそうな男でもなかったけど」
「本当に失礼だねトーゴくん。健太郎くんは、すごくわたしのことを大事にしてくれる人だよ」
健太郎くん――浦上健太郎、26歳。大手派遣会社のヒューマンテプコで営業職に就いている。
わたしは健太郎くんと出会ったときからのことをトーゴくんに話した。
運ばれてきたコーヒーをすする彼は、わたしが健太郎くんを語れば語るほど眉間の筋を増やしていく。
「で、わたしと別れたことを、友達に責められたみたいで……」
健太郎くんが話していたことをそのまま口にしたところで、トーゴくんは考え込むように首をひねった。
「仕事を辞めて気力を失っているわたしを、どうして支えてやらなかったのか。そういう意味で友達たちに責められたんだと思う」
わたしが言うと、トーゴくんはだるそうに頬杖をついた。
「……それ、たんに『あんなイイ女と別れるなんてもったいねぇ』っつー意味で責められただけなんじゃねえの」
「え……」
その瞬間、鼻先をなんとも食欲をそそるにおいがかすめた。