裏腹王子は目覚めのキスを

「そいつ、お前が実家で引きこもってる一年間、一切連絡よこさなかったわけだろ? 少しでも心配してりゃ、普通メールの一本でも送るだろうが」
 
呆れたように言われ、わたしは唇を尖らせた。

「健太郎くんは、わたしのこと、すごく理解してくれてるもん」

正面で静かにスプーンを動かすトーゴくんは、三十歳を迎えてもなお王子様の呼び名がふさわしい、煌めいたオーラを発している。
 
そんな王子様と比べてしまえば確かに見た目は敵わない。
でも、健太郎くんにだって、いいところはたくさんある。

「トーゴくんみたいに浮ついてないし、浮気も絶対しないし」
 
強く主張した瞬間、王子様は間髪いれずにつぶやいた。

「俺だってしねえよ、浮気なんて」

「え、してるじゃない」
 
本音がこぼれると、トーゴくんは心底嫌そうに唇を歪めた。

「失礼だなお前。確かにこれまで女とは遊びの関係のほうが多かったけど、それはお互い合意の上だし」
 
言いながら、彼は責めるようにわたしを見る。

「だいいち、ちゃんとした彼女がいるときは絶対そういう遊びはしなかった。何気に一途なんだよ、俺は」
 
わたしがじとーっと目を細めたら、トーゴくんは眉間に寄せた凛々しい眉をぴくぴく動かした。

「信じてねえな……?」

「だって……」
 
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