裏腹王子は目覚めのキスを
テーブルに目を落としていても、トーゴくんのぶれない視線を感じる。
口は悪いけど本当は優しくて、でもときどき、驚くくらい強引な王子様。
本当に、言うまで帰してくれない気がする。
椅子ごと床に沈んでいきそうだった。
ふうと深呼吸をして、肺に溜まっていた空気を吐き出す。
そしてわたしは、声を絞り出した。
「その……、わたしが、ふ、不感症だから」
全身が心臓になったみたいだった。
激しい動悸で、このまま倒れてしまいそう。
恥ずかしすぎて、全身から汗がふき出す。
舞い降りた沈黙に、肩を縮めていると。
「それ、自己診断か?」
「え……?」
トーゴの表情は変わらなかった。
笑ったり、からかったりする様子もなく、真剣な顔つきで言う。
「病院かなんかで診断してもらったのか?」
「う、ううん、健太郎くんに言われて……」
まったく茶化されなかったせいか、わたしを包んでいた羞恥心がにわかに薄れた。
恥ずかしい告白には違いないのに、これまでひとりでしまいこんでいた事柄だからか、堰を切ったように話してしまった。
以前健太郎くんと付き合っていたときに一度、しようとしたことがあったけれど、結局うまくいかなかったこと。
その前の彼氏のときも痛いだけだったこと。