裏腹王子は目覚めのキスを
「わかったよ。僕のほうでいろいろと進めておくから、羽華子は何もしなくていい。今、嬉しさのあまり混乱してるんでしょ」
そう言われて、わたしは黙り込んだ。
嬉しい?
わたし……嬉しいのかな?
目を上げて、ため息をついている健太郎くんをそっと観察する。
色白の丸い顔にナイフで切り込みを入れたような両目と、先がへこんだ平べったい鼻。
思春期のニキビ跡が残った頬に、ヒゲが伸びるの早いのか青く剃り跡が見える口元。
トーゴくんとはすべてが正反対だけど、わたしは健太郎くんの味のある顔が好きだ。
小動物のように小さな口をもぐもぐと動かして食事をする姿は見ていて可愛いと思うし、なにより一緒にいると心が変に騒ぐこともなく落ち着く。
トーゴくんと並ぶと周囲の視線が集まって気が気じゃないし、トーゴくん自身も歩きながらいろんな子を観察しているんだろうなと思うと、なぜかわたしの気持ちは沈んでしまうから。
そこまで考えてハッとした。
なんでトーゴくんのことなんか考えてるんだろう。
「ひとまず来月、旅行に行こう。婚前旅行ってことで。このあいだのお盆に行けなかったからさ。羽華子、誕生日でしょ」