裏腹王子は目覚めのキスを

健太郎くんは小さな目を細めて、表情の出にくい顔にわずかな笑みをのぞかせる。

「ホテルに着いたら、ちょっとしたサプライズがあるから、楽しみにしてて」

「え……」
 
わたしは驚いた。
 
サプライズがあるなんて言ったらサプライズにならないような気もするけれど、とにかく健太郎くんがこんなことを言い出すのは初めてだ。

「う、うん」
 
作り笑いを浮かべながら、わたしはさりげなく彼の手から自分の手を引き抜いた。
 
心臓が変な音を立てている。
 
どうしてだろう。
 
健太郎くんの厚みのある手に触られた瞬間、わたしはぞっとしてしまった。
 
あれだけサプライズに憧れていたのに、いざ健太郎くんからサプライズと言われると、期待に胸が弾むどころか、不安ばかりが募っていく。
 
わたし……どうしたんだろう。
 
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