裏腹王子は目覚めのキスを

「ま、待って! 結婚式って……!?」

「招待客はいないからふたりきりだけど、そのほうがロマンチックでいいよね」
 
健太郎くんはベッドのサイドボードに置かれていたホテルの案内を手に取り、ぺらぺらめくっていく。

「ここにはレストラン、三つしかないみたいだ。どれにする?」
 
わたしは硬直した。
 
身体は凍りついたように動かないのに、心臓だけは狂ったように響いている。
 
――お前の意見を聞いて、お前のことを尊重して、ちゃんとお前を受け入れてくれてるのか!?
 
トーゴくんの声が、また、耳の奥にこだまする。

「ねえ、健太郎くん。ここで結婚式……するの?」
 
焦りを抑えて静かに尋ねると、彼はこくんとうなずいた。

「うん。海外挙式って興味あったし」

「でも……だって、まだ親に挨拶もしてないし……。いろいろと準備……できてないよ」
 
健太郎くんと結婚することを考えていたくせに、いざ式をあげようと言われて、わたしは激しく動揺していた。
 
健太郎くんの表情は変わらない。
静かだけど、その小さな目の奥で何を考えているのか、よく見えない。

せっかくリゾートに来たからリハーサルのつもりで、ということなら、納得もできるけれど、健太郎くんはそうは言わない。

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