裏腹王子は目覚めのキスを

「親には事後報告すればいいんじゃない? 僕は真面目に働いてる普通のサラリーマンだし、羽華子の親だってダメとは言わないでしょ」

「だけど、結婚式っていうのはやっぱり、事前にいろいろと準備して、式場選んだり、ドレスを選んだり、家族とか友達とか呼んで、自分で作り上げるものなんじゃないのかな」
 
結納とまではいかなくても、せめて両親同士の顔合わせくらいするのが普通なんじゃないのかな、と思った。

考えることを避けていたせいで式までの具体的な流れは曖昧だけれど、結婚は当人たちだけではなく、両親や親戚なんかの“家”同士の関係だって生じさせるはずだ。
 
カーテンの端を掴みながら自分の言葉を精いっぱい口にしたのに、健太郎くんはにべもなく首を振る。

「そんなことないよ。そもそも結婚式っていうのは婚姻を確認するための儀式なんだ。牧師の前で愛を誓うのに周りなんて関係ないでしょ。人に祝ってもらうためにするんじゃないよ。それとも何? なにか不満? 羽華子はサプライズが好きなんじゃなかったの?」

「それは……」
 
サプライズは好きだけど、サプライズ結婚式って……どうなの。
 
彼氏がせっかく用意してくれたのに、喜ばないわたしが薄情なのかな。

黙っていると、健太郎くんはわざとらしくため息をついた。

「どうしてもっていうなら、日本で披露宴だけやればいいよ。それで文句ないでしょ」

「文句って……」
 
< 236 / 286 >

この作品をシェア

pagetop