裏腹王子は目覚めのキスを



頭がぐらぐらする。
 
ホテルの一角にあるレストランで、健太郎くんは英語のメニューのなかから適当に料理を注文した。
 
魚介のパスタと目玉焼きがのったナシゴレンが運ばれてくると、彼はスプーンとフォークを手に取る。

「ほら、美味しいよ」
 
ひとくち食べたあとで、取り皿にわたしの分を取り分け、こちらによこした。

「うん、本当だ、おいしい……」
 
そう言ったものの、味なんてよく分からない。
 
心の中は冷えているのに、顔では無理に笑っていた。
 

本当は帰りたい。
 
でも、健太郎くんを怒らせるのが、恐い――。
 

自分の迂闊さを呪いたかった。
 
ここに来るまですべてを任せきりにしてしまったせいで、両替した現金も、帰りのチケットも、重要なものはすべて健太郎くんが握っている。

それでなくてもわたしは海外に不慣れで、英会話にだって自信がない。
 
ぼうっとしていないでガイドブックを熟読していれば、少しはひとりで行動する自信を持てたかもしれないのに。
 
自業自得だ。
流されてばかりいたから、こんなことになるのだ。

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