裏腹王子は目覚めのキスを


「けど、恐怖や罪悪感を利用して女を自分の支配下に置く行為は、非人道的じゃないんですかね?」
 
健太郎くんの眉間に皺が寄った。
はじめて見る彼の表情に怖気が走って、同時に胸が苦しくなる。
 

トーゴくんと健太郎くんは、水と油だ。
 
健太郎くんは無表情で何を考えているかわからないし、傍から見たら鈍感そうに見えるかもしれないけれど、そうやって表面的にバリアを張っていないと内側の脆さが露出してしまうのかもしれない。

弱い自分を、必死に守っているのかもしれない。
 
トーゴくんの正論は、きっと彼をひどく傷つける。
 
この期に及んでそんなふうに考えるなんて、わたしは本当にダメな人間だ。

「……ごめん、トーゴくん」
 
つぶやき声に、王子様は一瞬、眉をひそめる。
 
わたしはトーゴくんの手を取らずに、身体全部で健太郎くんに向き直った。

「ごめんね、健太郎くん」
 
これ以上、トーゴくんの口から言わせてはいけない。
 

< 251 / 286 >

この作品をシェア

pagetop