裏腹王子は目覚めのキスを
やっぱり、悪いのはわたしだ。
仕事でも、恋愛でも――傷つきたくないからと心を眠らせて、自分の意思をはっきりと伝えずに、流されてきたわたしが、一番悪い。
「わたし、健太郎くんとは結婚できない」
目を覚まして、しっかりと現実を見極めて、自分の足で歩かなきゃいけなかったんだ。
「ごめんなさい」
深く頭を下げる。
白い砂の上に、太陽が作り出した影が落ちていた。
ウェディングアーチの下で、わたしと健太郎くんのそれは、決して交わらない。
そのとき、
「婚約破棄で、訴える」
低い声に顔を上げた。
健太郎くんは冷たい目でわたしを見据えたまま、感情のない声を出す。
「羽華子、お前、僕を騙してその男と二股かけてたんだろ。……許さない。絶対訴えてやるからな」
鋭い目つきで睨まれ、わたしは固まった。向けられた視線には、壮絶な悪意がにじんでいる。
「はは、本性出たな」
スーツ姿の王子様が、すっと足を踏み出す。
彼が斜め前に立ったとたん、こわばった心が緩むのがわかった。
自分の足で立つと決めたばかりなのに、トーゴくんは、その存在だけでわたしを甘やかす。
「自分の女を別の男の家に平気で住まわせてたそちらには、非がないとでも? だいたい最初に言ったでしょうが。俺はこいつの保護者だって。男と女の関係じゃないですよ」