裏腹王子は目覚めのキスを
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ツインルームに置いてあった荷物を回収し、フロントにわたしの分のカードキーを返却すると、ドレスに着替えた個室へと戻る。
トーゴくんはわたしと一緒に部屋へ入ると、着替えを手伝うためについてきた女性スタッフに何事か話しかけ、チップを渡して強引に追い返してしまった。
「どうしたの?」
「いや、べつに」
ツインルームの半分ほどしかない個室は、ドレスアップのほかにウェディングフォトの撮影にも使われるらしく、狭い空間に鏡台だけではなく花で飾られたダブルベッドも置かれている。
トーゴくんは深呼吸するように長い長い溜息を吐いてから、いきなりわたしの両頬をつねった。
「つーかお前はもう! なんであいつと旅行なんかに来てんだよ!」
「い、いひゃいっ」
乱暴な手から逃れ、驚いたのとわけが分からないのとで、ただ視線を返すと、トーゴくんはおもいきり顔をしかめた。
「待ってろって言っただろ!?」
「ま……待ってろ? え、いつ……?」
いつもの不機嫌に輪をかけて感情をあらわにする彼を、わたしはおずおずと見上げる。
トーゴくんは眉間の皺を、わずかに減らした。
「……憶えてねーの?」
わたしの顔を見ると、
「嘘だろ……」
彼はがっくりと肩を落とした。
「ああくそ、あの最中に言った俺のせいかよ」
ぶつぶつ口の中で何かを呟いていたと思ったら、ふいに王子様は奥のバルコニーの扉を開いた。靴を脱ぎ、浜辺で付着した白い砂を払いはじめる。