裏腹王子は目覚めのキスを
トーゴくんは会社でシンガポールに出店するためのプロジェクトに関わっていたはずだから、出張でとなりの国に来ていたとしても不思議はない。
でも、こんな偶然があるだろうか。
だいたい今日は土曜日で、トーゴくんは昨日の金曜日の夜には日本に帰っていたはずじゃなかったの?
キャスターの汚れを洗い流してバスルームから出てくると、トーゴくんは首をひねっているわたしを見て、不敵に笑った。
「俺はな、昨日の昼の便で日本に帰る予定を、お前がビンタン島に向けて出発したって桜太が連絡よこしてきたから、急遽、キャンセルしたんだよ。んで、もう一泊してシンガポールに残ったわけ」
「そ……それって」
結局、どういうこと?
わけがわからない。
「トーゴくん、わたしが旅行でビンタン島に来るって、知ってたの?」
そもそも、わたしはどうしてこの島に来ることを決めたのだっけ?
偶然が重なりすぎて、頭が混乱する。
と、王子様はふっと吐息をこぼした。
「策士は桜太――の彼女、だな」
「え……? 桜太の彼女って……」
みのりちゃん?
頭の中に、ペイズリー柄のワンピースを着こなす彼女が思い浮かぶ。