裏腹王子は目覚めのキスを


まさか自分が花嫁を略奪するとは思わなかった、とトーゴくんは後悔でもしているみたいな口調で言う。

「けどお前のことだから、あんな式でも一度挙げたら、変な罪悪感とか責任感とか覚えて、あの男と生きてく、なんて言い出しかねねぇから」
 
トーゴくんの腕に包まれながら、ふと思う。 
 
これは愛の告白なのだろうか。
 
釈然としなくて、わたしは彼を見上げた。

「なんだか……ダメ人間て言われてるようにしか」
 
その瞬間、強く抱きしめられて、続きを言えなくなった。
耳元に、トーゴくんの声が落ちる。

「羽華お前、責任取れよ」

「え……?」

「俺に、家へ帰る喜びを、教えただろ」
 
わたしの耳にぴたりと唇を当てて、王子様はささやく。

「お前が待ってる家に、帰りたいんだよ俺は」
 
熱っぽい吐息と、声に、背筋がしびれた。
 
胸の鼓動に合わせて、全身が震える。

「トーゴくん、それって……」
 
身体を離すと、彼はわたしの頬に手を添えてまっすぐ視線を下ろす。

「羽華、俺と……」
 
途中まで言ったあと、王子様は口をつぐんでしまった。
何事かを考えていると思ったら、おもむろに視線を外し、わたしから手を離す。

そして、

「――けど、お前は俺のこと、嫌いなんだっけ……」
 
ぽつりと言い、よろよろとベッドに腰掛けた。

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