裏腹王子は目覚めのキスを



「ええ!?」

トーゴくんは開いた足に両腕をのせ、うなだれている。

「ど、どうし――」
 
態度を急変させた彼に声をかけようとした瞬間、思い出される。
 
――嫌い……トーゴくんなんか。
 
あの2LDKのマンションのオフホワイトのシーツの海で、確かにわたしは王子様にそんなセリフを投げつけたのだ。

わたしはあわてて彼に駆け寄った。

「ち、ちがうの」
 
ベッドに座ったまま顔を上げないトーゴくんに、必死に説明する。

「あれは言葉のアヤって言うか、自分でも気づいてなかったっていうか、本当はわたし、ずっと前からトーゴくんのこと――」
 
その瞬間、王子様が顔を上げた。その口元は皮肉っぽく笑っていて……、

「俺のことを?」

深い色の瞳は、わたしを簡単に絡めとってしまう。


「好き……」

 
それは溢れるようにこぼれ落ちた。


「好き、トーゴくん……」
 
頬を伝い落ちる、涙のしずくと一緒に。


「好きだった……ずっと前から」
 

< 260 / 286 >

この作品をシェア

pagetop