裏腹王子は目覚めのキスを
「ほら、あれだよ」
「うわぁ!」
笑顔でカメラを構える大勢の観光客の向こうに、海に水を吐きだしている真っ白な巨像が見える。
どこか愛嬌のあるライオンの頭と、うろこのある体をエビのようにまるめた魚の胴体。
「すごーい!」
欧米人もアジア人も入り混じったいろんな人種の観光客に混じって、わたしもスマホで写真を撮る。
海に突き出た桟橋のような場所まで歩くと、水を勢いよく噴き出すマーライオンを斜め前から見ることができた。
「世界三大がっかり名所なんて呼ばれてるから、どんだけ小さいんだと思ったけど、見てみると意外にでかいんだよな」
トーゴくんが静かに言って、手すりにもたれていたわたしは振り返った。
「あれ? トーゴくんは見たことあったの?」
「つい2日前にな。現地の担当に連れてきてもらったんだよ」
出張で滞在しているあいだに、トーゴくんは会社の人とここを訪れたのだという。
「え、てことは……」