裏腹王子は目覚めのキスを

「ほら、ルームキー。プールに行くときに必要らしいから、なくすなよ」
 
呆然としているわたしを置いて、トーゴくんはエレベーターホールに向かっていく。

はっとして、あとを追った。

「と、トーゴくん! と、と、泊まるの? ここに?」

「そうだけど?」
 
何を今さら、という顔をされて、わたしはあわてた。

「だって! 帰るんじゃなかったの?」

「今日は土曜だし。飛行機、明日の昼の便だし」

「で、でもここって、すごく高級なんじゃ……」

「まあ、高層階はな。けど俺らの部屋は真ん中らへんだし。そんな驚くような値段でもねーよ」

「で、でも」
 
それだって、一泊で何万円もするんじゃないの?
 
泡を食っているわたしに、トーゴくんはいたずらっぽい笑みを見せた。

「今日はお前の誕生日だし?」
 
得意げな瞳に、何も言えなくなる。
 
なんなの……もう。
 
さっきからトーゴくんがやたらと甘くて、どうすればいいか分からない。

「ほら、部屋で着替えて、さっさと屋上に上がるぞ」
 
口を開いたエレベーターに乗りこもうとして、彼は思い出したように振り返った。

「水着、持ってきてるよな?」

「あ……」




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