裏腹王子は目覚めのキスを
バスローブ姿でホテル内をうろつくのってどうなんだろうと思っていたら、他の宿泊客たちも同じような格好でエレベーターに乗っていて、ほっと気持ちが緩む。
そしてたどり着いた57階の景色に、わたしは息をのんだ。
暗い空の下、光をまとったビルたちの群れを、地平線まで見渡せる。
目の前には150メートルもの長さがあるプール。照明に浮かび上がるヤシの木が、デッキチェアのあいだに等間隔で立っている。
南国風スパリゾートなんて目じゃない。
本物の楽園だ。
「うわあ……」
すぐそばに建っているビルは半分より上の階層しか見えず、なんとも不思議な光景だった。
立ちつくしているわたしを尻目に、トーゴくんは「行くぞ」とタオルをデッキチェアに置いてプールに入っていく。
「あ、待って」
バスローブを脱ぎ捨て、わたしもあとに続いた。
羞恥心なんて吹っ飛ぶくらいの景色だった。プールの端まで行くと、さらに世界がよく見える。
「すごい……」
ビルの屋上に作られ、まるで空中に浮いているようなプールは、落ちたらそのまま下まで真っ逆様なのかと思っていたけれど、端まで行くと水路型の排水溝が作りつけられた二重構造になっていて、当然ながら人が身を乗り出しても落ちない造りになっている。
広いプールを満喫してから、端っこのへりに両肘をついてうっとり夜景を眺めていると、いきなり後ろから抱きしめられた。