裏腹王子は目覚めのキスを
「すげー景色だな」
トーゴくんの声に、胸が震える。
屋上にはほかにも人がいるけれど、薄暗い上に開放的な空間だからか、人目は気にならない。
ただ、背中に触れるトーゴくんの肌や体温に、意識が集中した。
水の中でも、素肌に触れる手の感触がはっきりとわかる。
心臓の鼓動が伝わりはしないかと心配になりながら、わたしは遠くの空を見た。
曇っているせいか夜空に星は見えないけれど、ビルや街灯の明かりは地平線まで続いている。
プールに入りながらこんな景色を見られるなんて、思ってもみなかった。
生まれてはじめての海外旅行で、こんな贅沢していいのかな。
「わたし……明日死ぬのかも」
「は?」
「だって、トーゴくんと一緒にこんなふうに過ごせるなんて……」
「羽華」
「え?」
次の瞬間、耳にキスをされ、わたしは小さく悲鳴を上げた。
「やっ、何!?」
振り返ると、トーゴくんは下を向いてクツクツ笑っている。
「お前ホントいい反応するな。いじめがいがある」
「も、もう、やめてよ」
もがいても、トーゴくんの腕はがっちりと前に回されていて抜け出せない。
「ふやけるくらい浸かってようかとも思ったけど、死なれたら困るし。俺もそろそろ限界だわ」
「え……」
「部屋に戻ろう、羽華」
耳元で甘くささやかれ、本当に失神するかと思った。