裏腹王子は目覚めのキスを

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35階の部屋に下りてきたわたしは、一緒にバスルームに入ってこようとするトーゴくんをどうにか追い出して、そそくさとシャワーを浴びた。
 
服を着て出ると、王子様は不満げな顔をする。

「どうせ脱がすんだから、着なくていいのに」
 
わたしはうつむきながら、水着姿のままのトーゴくんをバスルームに押し込んだ。
 
顔が熱い。
 
ドレッサーの椅子に座って髪を乾かしながら、鏡に映る自分を見つめる。その後方には、日常生活ではめったにお目にかかれないキングサイズのベッドが映っている。
 
心臓が尋常じゃないくらい響いて、息が今にも止まりそうだった。
 
別に、はじめてじゃないのに、なんでこんなに緊張するの。
 
落ち着け、と自分に言い聞かせていたら、重要なことを思い出してますます呼吸困難になる。
 
そうだった。わたし、もう既に一度、トーゴくんと……。
 
思わず立ち上がった。その勢いで、椅子が後ろに倒れる。
 
なんで今まで平気でいられたんだろう……!
 
恥ずかしいなんてもんじゃない。
あのときのいろんな情景が次々と思い起こされて、顔から火が出そうだった。
 
に……逃げ出したい!
 
そのとき、バスルームの扉が開いて、バスローブ姿のトーゴくんが姿を現した。


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