裏腹王子は目覚めのキスを



「やっぱいいホテルはシャワーの水圧ハンパないな」
 
機嫌良さそうに歩いてきたかと思うと、わたしの正面で足を止める。そして王子様は、つぶやいた。

「……なんでいきなりそんな顔してんだよ」

「そ……そんな顔?」
 
心臓の高鳴りのせいか、声が震える。と、伸びてきた手が髪に触れた。

「27歳、おめでとう、羽華」
 
こめかみにキスをして、トーゴくんはわたしを覗きこむ。

「なにか欲しいものは?」
 
彼のいたずらっぽい笑みが、胸いっぱいに広がる。
 
4か月前、トーゴくんの誕生日を祝ったあのときは、こんなふうになるなんて夢にも思っていなかった。
 
わたしはもう、十分もらってる。
 
仕事へのやる気や自分に対しての自信だけじゃなく、サプライズのプロポーズや夢みたいな贅沢な時間。
 
あまりにも幸せだから、少し恐い。
 
この幸福がいつか消えてしまうんじゃないかと。

やわらかな泡が、はじけて消えてしまうみたいに。

「……トーゴくん」

「ん?」

「わたし、トーゴくんがほしい。……死ぬまで、ずっと」

 
見上げると、王子様から笑みが消えて、その顔がみるみる赤くなった。右手で口元を覆い、横を向いてしまう。

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