裏腹王子は目覚めのキスを


「トーゴくん?」
 
顔を逸らされて不安に思っていると、ぼそっと声が聞こえた。

「やべー……羽華に殺される」

「えっ――きゃっ」
 
不意に抱え上げられ、あっというまにスプリングの効いたベッドに放り出された。

「お望みどおり、お前にやるよ」

「え……ええっ!?」
 
トーゴくんは電気を落とし、バスローブを脱ぎ捨て、剥き出しの身体で覆いかぶさってきた。

床から天井まである大きな窓には美しい夜景が広がり、外の明かりに浮き上がった王子様はぞっとするほど色気を放つ。

「や、ちがっ、そういう意味で言ったんじゃ……」
 
ブラウスの裾から手が入り込んできて慌てると、彼は静かに言った。

「そういう意味だろ」

「だから、そうじゃな……」
 
わたしの顔の両側に手をついて、トーゴくんはまっすぐ目線を下ろす。
吸い込まれそうな瞳に、言葉が途切れた。

「……羽華に全部やるよ」
 
心臓の鼓動が、全身に響く。

ふたりでも大きすぎるベッドと、必要以上に大きな鏡がついたドレッサー。すべてが息をひそめて、王子様の声に耳をかたむける。


「俺の心も、身体も、この先の人生も全部、羽華にやる」
 

真剣な声と瞳に、ぼろっと涙がこぼれた。
目じりから耳に伝い落ちていく滴を、トーゴくんの指先が優しく拭う。

「トーゴく……ん」
 
唇が重なると、あとはもう、されるがままだった。

 
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