裏腹王子は目覚めのキスを

「まあとなりの可愛い幼なじみに手を出すわけにはいかねえし。そんなつもりもなかったけど」
 
言葉を切ると、一旦考え込むように口を閉じた。それから、わたしを見る。

「でも12年ぶりに現れたと思ったら、おもいっきり俺の好みのど真ん中な女に成長してて、ちょっと焦った」
 
おまけにメシもうまいし、と唇の端を上げて薄く笑う王子様に、顔が熱くなる。

「そんな女が一生懸命、俺のこと考えてくれて、動き回ってくれるんだぞ。普通に考えて手放したくなくなるだろ」
 
トーゴくんのいたずらっぽい瞳に射抜かれて、わたしは目を伏せる。

何を考えているのか分からなかった王子様の本当の心。記憶を遡って、彼の表情や仕草を思い出そうとしてみる。

「しかも酔っぱらってたとはいえ、潤んだ目で好きとか言われたら、ひとたまりもねえよ」
 
お前は覚えてないみたいだけどな、と言われて、わたしは肩を縮めた。
 
ふたりで居酒屋に行ったのは、再会して一週間足らずのときだったはずだ。
そしてトーゴくんはそのときから女遊びをする気がなくなったという。
 
確かに、仕事が忙しくないのに家にいることが多くて、女の人と遊ばないのかな、と不思議に思ったことがあった。

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