裏腹王子は目覚めのキスを


「ああ、俺は外商部――といっても百貨店とは違うから、仕事の内容は営業と企画に近いんだけど。企業訪問して自社商品売り込んだり、雑誌付録とか景品を作ったり」
 
言いながら棚を指さす。

「ほら、そこらに置いてあるだろ。一部は俺が手掛けたやつ」
 
作りつけの黒い棚にはタバコのカートンに紛れて小物類が乱雑に放り出されている。
ペン立てやら文房具やら写真立てやらには、よく見るとメーカーの商標とともに四つ葉のクローバーと青い鳥を模したブルースマートのロゴが入っていた。

「へえ、すごい」
 
アイロンを片付けながら、わたしはそれらを眺めて感心した。自分の仕事が実際に形になると、喜びもひとしおに違いない。

「最近は海外事業部の仕事も手伝わされてて、目が回るほど忙しい」
 
はあと大きくため息をつく彼に、わたしは思いついたように提案した。

「トーゴくん。スープ、食べない?」

「あ?」

「野菜多めでね、ヘルシーなの。昼に作りすぎちゃって、余ってるから」
 
わたしをじっと見つめて、彼は疲れたように椅子にもたれた。


「食ってもいいけど」
 
やった、と心の中で叫びながら、わたしはキッチンに向かう。

「今、温めるね」 
 
本当は昼に作りすぎたわけじゃない。
 
人参とトマトとセロリの具だくさんスープは、トーゴくんのために用意しておいたものだ。
彼に食べてもらえなければ、明日のわたしの昼食になっていたはずのそれを火にかける。

「春雨入りだから、量食べても太らないよ」

「ふうん」

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