裏腹王子は目覚めのキスを
 
コーヒーを淹れていた手を止めて、トーゴくんを見る。

せっかく取れた休みの日なのに、わたしに付き合わせて出かけたら、きっと身体が休まらない。
 
やっぱり今日はゆっくり寝てたほうがいいんじゃない?
 
そう言おうかどうか迷っていると、彼はタブレット画面に指先をあてた。

「どうする? 都心駅のほう行くか?」
 
画面をタップしながら窓の外を見る。
灰色の空の下、遠くに並ぶビル群が都心駅周辺だ。
 
最近できたばかりの駅直結のビル『都心プレシャス』は、伝統の品物や人気のご当地名産品、ここでしか買えないファッションやグルメを取り揃えた女性に人気のショッピングスポットだ。
 
さすが、王子様は女性のツボを心得てるな……となんだか複雑な気持ちになったとき、目の前を閃光が走った。
 

ツボ……。そうだ!


「あのね、わたし、行きたいとこがある」 
 

キッチンのカウンターから身を乗り出すと、トーゴくんはきょとんと眼をまたたいた。


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