壁ドン王子な上司さま
モノローグ〜彰
小春の兄の大樹と大地とは、小学校は違うが、同じ少年サッカーチームに所属していた。彼らの両親が試合の応援に連れて来た小春に初めて会った時、まだ3歳くらいだった。
兄弟がいない俺にとって、大地と小春は弟や妹みたいだった。

中学に入り、同じ学校に通うようになってからは、大樹の家に遊びに行くことが増えた。ほとんど入り浸りだ。

大樹と同じ高校に進学してからも、俺の立花家通いは続いていた。うちの親たちも、全く知らない関係じゃないので、遊び歩くよりは安心していたようだ。
その頃には小春の視線や仕草が、明らかに俺への好意を含んでいるのは気づいていた。しかし10歳の少女のことなので、たいして気にも留めていなかった。

高校を卒業し大学に進み、たまに大樹と会っても、以前のように立花家に入り浸ることはなくなった。
大学も4年になり、早々に就職が決まって、暇を持て余していた俺に、大樹からお呼びがかかった。今年受験生の小春の数学をみて欲しいと言われ、久々に立花家を訪れた。

「いらっしゃい、彰くん」
出迎えた小春を見て、息を飲んだ。最後に会ってから3年。背が伸び、丸みを帯びた肩。以前はしていなかったブラジャーに包まれた胸は、窮屈そうに上下している。ゆったりしたシャツの上からでもはっきりと分かる括れた腰。大人になりつつある小春に、一瞬にして心を奪われた。小春に会いたい、それだけで再び立花家に入り浸るようになった。

中学生に本気で惚れるなんて、どうかしてるんじゃないかと思いもしたが、自分の気持ちを抑えることはできなかった。

好きだとか言ったことはなかったけど、小春と俺は、自然と付き合うようになった。
小春がかわいくて、愛しくて仕方ない。だが社会人が高校生に手を出す訳にはいかず、彼女が成人するまで待った。
優しくするつもりが、歯を食いしばり、俺にしがみ付く小春を見ていると、抑えが効かなくなり、思い切り欲望をぶつけてしまった。

小春の就職を機に、彼女の両親に同棲の許可を願い出た。結婚も考えてたが、小春にはまだ早いような気がしたのだ。


「彰?」
過去を思い出しながら笑った俺を、小春が怪訝そうな顔で見上げた。
「そういえばさ」
小春の腕を引っ張りながら身体を起こすと、そのまま抱き寄せた。
「昔、大樹に壁ドンされたよ」
「え、お兄ちゃん?」
小春の髪に顔を埋め、空いた手で頭を撫でながら教えてやった。
「小春と初めてキスしたのがバレた時、あいつはまだ中学生なんだから、成人するまでは手を出すなって、脅された」
「なっ!」
小春は目を見開いて、そして顔を真っ赤にした。
「言いつけを守って何年も待てるくらい、小春のことが好きなんだけどな」
小春の唇に自分の唇を押し付けると、小春も応えてきた。
小春が望むことなら、何でも叶えてやりたい。思いながら深くなるキスを止められなかった。
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