こんなのズルイ。
「傷つくのには慣れてる。だから、いいよ。あいつのところに行けよ」

 コウタが私の腕をつかんで引きはがそうとした。私が泣いている本当の理由を、どうすれば伝えられるんだろう。

 私はうんと背伸びをして彼の唇に自分の唇を押しつけた。

「なっ……」

 コウタが驚いたように私を見る。私は頬が熱くなるのを感じながらも、彼の目をじっと見つめた。

「私、タツキとメグが仲良くしてるのを見るのがすごくつらかった。二ヵ月前、コウタに〝俺を好きになってほしい〟って言われて……驚いたけど、コウタと一緒に過ごすうちに、気づけば今までとは違う気持ちになってた。ただの幼馴染みだったときみたいに楽しいだけじゃなくて、どうしようもなく嬉しくてドキドキするの。今だって、心臓が口から飛び出しちゃうんじゃないかって思うくらい。六年もほかの人を想ってたくせに、たった二ヵ月で心変わりするなんてって思われるかもしれないから言えなかったけど、私、コウタのことが……好き」

 最後は消え入りそうな声になった。
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