極妻
くわえタバコで、素っ気なくソファに腰をしずめた。私とは人ひとり分くらい空けて。


シャツの襟からのぞく火傷の跡が痛々しい。なんど見ても心臓が冷たくなる。


「あ、うちな……ずっと旦那さんに……あ、ありが…ありが…あり…が」


「"蟻"がどうした?」


「そうそう蟻がな……って、ちゃうわボケ!わかるやろ!」


あかん乗りツッコミしてる場合とちゃう。でもいざとなると素直になれへん。『ありがとう』が出てこん!


心で葛藤していたが、対称的に朔夜は落ち着いてタバコをもみ消した。


「どーでもいいけど。何でもねぇなら教室戻れば?」


「な、なんや最近おかしない!?病院から戻って冷たなったわ!」


まぁ……もともと優しかったわけでもないけどな!なんかろくに目も合わさんくなった!


そうや、私、旦那さんが何を考えとるんか、まるで分からんから不安で焦っとるんや。


なんなんやろ、この胸のモヤモヤは。


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