極妻
私にも御劔組を継ぐ資格が?


話が飛躍しすぎて呆気にとられた。そんなことにまったく考えが及ばなかったからや。



「そうなんや…。うーん、でも心配せんでもそんなつもりないよ」



私は苦笑いしたけど、鬼塚さんの声は固いままだ。



「小夜子様にそのつもりがなくても、他の者に知れれば組は揉めます。おそらく、若頭の葛木一派があなたを担ぎ出すかもしれない」



「葛木?それって確か組長になり損ねた人?」



「葛木はいまだに組長の座と朔夜様の命を狙ってます。あなたが実妹と知れば、それを理由に朔夜様を追い落とそうとするに違いない」



「なんやて…」



「とりあえず朔夜様を引きずり下ろし、ゆくゆくはうちの組を支配しようと企てる事は想像に容易い。つまり朔夜様の『妹』という存在自体が、内乱の危険因子なのです」



ここにきて、ようやく事の深刻さが分かってきた。私の存在が、朔夜を窮地に追い込むかもしれないなんて。


しかし鬼塚さんの話はまだ続いた。



「問題は、それだけではありません。最悪なのはうちの組の火種となりかねない秘密を、よりにもよって大倭会の"あの男"が知っているということです」






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