極妻

私はそのとき何故かドキリとした。
いつか朔夜が、尊兄ちゃんの敵になるんやないか…って気がした。


「尊兄ちゃんは、うちが知ってるかぎり世界一の男や。兄ちゃんほどのひとはこの世のどこにもおらん」


「それはこれまでオレに出会わなかったからだ」


「………なんやて!?呆れるわ……このナルシスト」


「お兄様に恋してるガキに言われたくねーよ」


「そういえば、今思い出したんやけど、初めて会うた夜、"取引"がどーのこーのて言うたやん?あれって誰のこと?取引てなん?まさかもしかしてうちの…」


「見た目と違ってぺらぺら喋ら女だなー。教えてやってもいいけどただってわけにいかねー」


そう言うと、私がなにか言い返すより先に、朔夜に唇を塞がれてしまった。


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