極妻
「…うっ!?…ぐっ…!?」


やめて!と叫ぼうとしても、口を塞がれているので喋れない。
舌が唇を割って入ってきたから、思い切り噛みついてやった。


「……!?…痛ッ!?テメェ噛みつくなッ!?!!」


「……こ、ここここ…この無礼者!!今すぐここで死ね!!」


私の口のなかには、かすかに朔夜の血の味が広がった。


「無礼者だァ!?ハッハッハッ!このオレに向かって無礼者だァ!?」


唇の血をぬぐう朔夜からあわてて離れた。


怒りで胸がムカムカするというのに、私のファーストキスを奪ったこの男はケラケラ笑ってる。


悔しくて涙が滲んだ。なにこれ気持ち悪ぅ!!


「旦那さんには"お方様"とかいう関係の人がぎょうさんおるやん!ほな、うちにまで……」


「ハ?なんで小夜子が"アイツら"のこと知ってんだよ?」


「こないだご丁寧に挨拶されたからや!正妻のうちと平等に愛してもらうんやて!」


そういえばあの人たちもこの学校に通ってはるんやろか?

冗談やないわ!


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