二十年後のクリスマスイブ
「こんばんは!お久しぶりです…」

“カランカラン”と弱々しくドアの鐘を鳴らし、律子が桐人に言われたまま喫茶店『南風』に入った。

「あらあら!律ちゃん、こんな日に、どうしたのかな?」

 クリスマスイブの更け掛けた夜の店内は静かで、クリスマスツリーの電飾も何処か寂し気に点滅を繰り返す中、新井が意外な客の律子にグラスを拭く手を止めた。
 カウンターに律子が腰を下ろし、両手に抱えていた紙袋をテーブルに置いて、ポツリと呟いた。
「ねぇマスター…一度、壊れたものは元には戻れないのかな…」

「桐人の所に行ったのかい?」

「…女の人が居たの…これも受け取ってくれなかったし…」

 律子が紙袋を眺めながら溜め息を吐いた。

「桐人は、律ちゃんと別れてから、ずっと落ち込んでいたんだが…」

 律子の言葉に意外を感じながら、新井はサイフォンに粗く挽いたコーヒー豆を入れアルコールランプに火を点けた。

「私、やっばり桐人と居たい…」

「桐人も同じ気持ちだよ…きっとね、信じて待てばいい。クリスマスイブの夜だしさ」

「来るよね……桐人」

「ああ…」
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