二十年後のクリスマスイブ
「もう、静かにしてくれ…呼ぶのはよしてくれ!いいんだ。このままで…もう何もしたくないんだ…」

 桐人の想いとは裏腹に唇に温かいものが触れたと感じたのも束の間に、口の中に冷たいものが流れ込んだ。

「………桐人さん!」

 口の中に入り込んだものを飲み込んだ瞬間に桐人の肉体に力が入り、指先がピクリと動いた。
 そして、重い瞼を開いた目の前にあったのが心配した表情の真由美だった。

「何で、君が此処に?…」

「何でじゃないでしょ!どうしたの?一体…」

「死なないものだな?なかなか…」

「死ぬ気だったの?…」
「………」

「貴方らしくない…」

「女って偉大だな…自分だけじゃ出せない力を引き出してくれたり、生きる気力すら奪うというのが良く判った…」

 桐人は、衰弱しきった声で呟いた。

「馬鹿…とにかく、栄養つけるのが先よ!」

 真由美は、崩れた表情を手で覆いながら台所に向かった。
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