二十年後のクリスマスイブ
「今、生きていられるのは真由美のお蔭か…」

 桐人はベッドに横たわり煙草に火を着け呟いた。

「男と女…子供…家族…律子…人生…運命…」

 答えは出ているのだが、桐人の心の中はぐるぐると走馬灯のように葛藤が続いた。

「律子と、あれだけ愛し合って授からなかった子宝が、愛も無い情だけの一度のセックスで与えられて、告知が今日ってのも一体…?」

 見えない何かしらの力が働いていると、桐人は感じた。
 一度無くしかけた命…それから、1ヶ月程は部屋に籠もりがちの中で、ちょくちょく真由美は部屋に来て、立ち直るのを見守ってくれていた。
3ヶ月前…「有難う…もう大丈夫だから…」
 桐人は、一頃の笑顔を取り戻して真由美に今迄の礼を述べた。

「良かった!元気になってくれて…それで、これからどうするの?又、ホストに戻るの?」

「いや…他の職業を探すよ」

「そう…格好好かったけどな!ホストの桐人さん」

「何か、俺に出来る事はない?」

「何でも聞いてくれる?…」

 真由美が急に顔を下に向け小声で呟いた。

「命の恩人だからね!俺に出来る事なら…」

「抱いて下さい……一度でいいから…」

 真由美の覚悟の言葉だった。
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